2026年1月16日、高知県須崎市立朝ヶ丘中学校にて、全校生徒・教職員・地域住民を対象とした防災講演を行いました。
今回の講演では、2011年3月11日の東日本大震災を当時中学生として経験した語り部・防災士の紺野堅太が、自身の被災体験や「釜石の奇跡」と呼ばれる避難行動についてお話ししました。
さらに、南海トラフ地震による津波が想定される須崎市の地域特性を踏まえ、学校周辺の津波ハザードマップを確認しながら、「災害が起きたとき、自分はどう行動するのか」を生徒の皆さんと一緒に考えました。
講演後には生徒へのアンケートも実施。
「防災への関心がかなり高まった」と回答した生徒は77.9%。
また、家族や友人と防災について話したかという質問では、51.1%が「すでに話した」、41.5%が「まだ話していないが、これから話したい」と回答しました。
防災講演を「聞いて終わり」にせず、家族へ伝えるという行動につなげることができた、非常に印象深い防災教育となりました。

高知県須崎市立朝ヶ丘中学校で、生徒の皆さんに東日本大震災の被災体験を伝える紺野堅太
高知県須崎市立朝ヶ丘中学校で行った防災講演
今回の講演には、朝ヶ丘中学校の全校生徒を中心に、教職員、地域住民の方々など、約150名が参加しました。
講演時間は約80分。
その後、10~15分程度の質疑応答を行いました。
体育館に集まった生徒の皆さんは、東日本大震災の話を非常に真剣に聞いてくれました。
メモを取りながら話を聞く生徒、何度もうなずきながら話を聞く生徒、中には涙を流しながら聞いてくれる生徒もいました。
今回、私が特に大切にしたかったのは、単に「地震は怖い」「津波は危険だ」ということを伝えることではありません。
「災害が起きたとき、自分自身で考えて、自分の命を守る行動を取ってほしい」
ということです。
当時中学生だった私が経験した東日本大震災
私は2011年3月11日、東日本大震災を当時中学生として経験しました。
震災当時、私は岩手県釜石市にいました。
東日本大震災では、想定を大きく超える津波が東北地方を襲いました。
私自身も、当時の防災教育や避難訓練だけでは対応できないような状況に直面しました。
だからこそ、今回の講演では、現在の中学生の皆さんに対して、
「もし今、自分が同じ状況に置かれたら、どうしますか?」
という問いを投げかけました。
「もし今、津波が来たらあなたはどうする?」
講演では、私が実際に避難を迫られたときの状況をもとに、いくつかの選択肢を生徒の皆さんに提示しました。
「あなたならどうしますか?」
「指定された避難場所へ向かいますか?」
「家族を待ちますか?」
「友達と一緒に逃げますか?」
「もっと高い場所へ逃げますか?」
正解を最初から教えるのではなく、自分自身で考えてもらう時間をつくりました。
防災教育で大切なのは、知識を覚えるだけではありません。
実際に災害が起きたときに、
「自分ならどうするのか」
を普段から考えておくことが重要です。
「自然災害は予想通りには来ない」
今回の講演で、特に伝えたかったメッセージの一つが、
「自然災害は、私たちの予想通りには来ない」
ということです。
東日本大震災の際、釜石市では想定されていた津波の高さや浸水区域などがありました。
しかし、実際に発生した津波は、それまでの想定を大きく上回るものでした。
当時、津波が来ないと考えられていた場所にも津波が押し寄せ、指定されていた避難場所が安全とは限らない状況になりました。
だからこそ、
「指定されているから大丈夫」
と考えるだけではなく、
「本当にここは安全なのか?」
「もっと高いところへ逃げた方がいいのではないか?」
と、自分自身で考えることが重要です。
私たちは実際の避難の中で、
「危ない気がする」
「もっと高いところへ逃げた方がいい」
という判断をし、指定された避難場所よりもさらに高い場所へ逃げました。
その結果、命を守ることができました。
朝ヶ丘中学校周辺の津波リスクをハザードマップで確認
今回の防災講演では、東日本大震災の体験談だけで終わらせませんでした。
朝ヶ丘中学校周辺の地域特性を踏まえ、須崎市の津波ハザードマップを確認しました。
須崎市は海に近い地域であり、南海トラフ地震が発生した場合には、津波への備えが非常に重要になります。
生徒の皆さんと一緒に、
- 自分の住んでいる場所はどこなのか
- 津波が来た場合、どこまで浸水する可能性があるのか
- どこへ避難すればいいのか
- どのルートを使えばいいのか
- 実際にそのルートを歩いたことがあるのか
といったことを考えました。
ハザードマップは、ただ「見る」だけでは十分ではありません。
実際の避難行動につなげることが重要です。
南海トラフ地震に備えて「想定外」を考える
高知県では、南海トラフ地震による大規模な地震・津波が想定されています。
だからこそ、今回の講演では、
「ハザードマップに書いてあることだけを信じてはいけない」
という意味ではなく、
「想定を知った上で、それを超える事態も考えておく」
ことの大切さを伝えました。
例えば、
「この避難場所に行けば大丈夫」
だけではなく、
「もし避難場所まで津波が来たら?」
「避難経路が通れなかったら?」
「家族と離れていたら?」
「夜に地震が起きたら?」
「学校にいるときに地震が起きたら?」
というように、複数のケースを想定しておくことが必要です。
「津波てんでんこ」が教えてくれる、自分の命を守るということ
今回の講演では、東日本大震災の教訓として「津波てんでんこ」についてもお話ししました。
津波てんでんことは、津波から避難するときに、まず自分自身の命を守るため、それぞれが率先して避難するという考え方です。
私たち釜石の中学生が、東日本大震災の際に避難することができた背景には、日頃からの防災教育や避難訓練、そしてこうした教えがありました。
災害が発生したとき、
「家族が帰ってくるまで待つ」
「友達を待つ」
「みんなが逃げ始めてから逃げる」
という判断をしてしまうと、避難が遅れてしまう可能性があります。
もちろん、大切な人を心配する気持ちは当然です。
だからこそ普段から家族で、
「地震が起きたら、まず自分の命を守るために逃げよう」
と話し合っておくことが大切です。
中学生は「守られる側」だけではない
今回、もう一つ伝えたかったのが、
「中学生も地域を守る側になれる」
ということです。
災害が発生した場合、地域には高齢者や小さな子ども、障害のある方など、避難や避難生活に支援が必要な人がいます。
そのとき、中学生自身も地域の一員として力になることができます。
特に朝ヶ丘中学校は、津波から避難する場所としてだけではなく、災害後には地域の避難生活を支える場所としての役割も期待されます。
そのため、
「自分が助かる」だけではなく、「助かった後に何ができるか」
についても考えてもらいました。
防災講演後のアンケートで分かった、生徒たちの変化
今回の講演では、終了後にGoogleフォームを使って生徒の皆さんへアンケートを実施しました。
回答数は136件です。
その結果、非常に印象的な結果が出ました。
「防災への関心がかなり高まった」生徒が88.5%
「語り部を聞いた後、防災への関心はどう変わりましたか?」という質問に対して、
77.9%が「かなり高まった」
と回答しました。
さらに、
19.9%が「少し高まった」
と回答。
つまり、今回回答してくれた生徒については、約98%が防災への関心が高まったという結果になりました。

防災講演後に実施した「防災への関心の変化」に関する生徒アンケート
講演を聞いて「家族と防災の話をしたい」と思った生徒たち
もう一つ、大きな成果だと感じたのが、家族や友人との防災の会話です。
「語り部を聞いた後に、家族や友達と防災の話をしましたか?」
という質問に対して、
51.1%が「話しました」
と回答しました。
そして、
41.5%が「まだ話していないが、これから話したい」
と回答しました。
つまり、今回の回答者のうち、
約93%が「すでに話した」または「これから話したい」
という状態になりました。

防災講演後の「家族や友達と防災の話をしたか」に関するアンケート結果
防災教育は「聞いて終わり」ではなく「家族へ伝える」ことが大切
この結果を見て、私自身も非常に嬉しく感じました。
防災講演をして、
「勉強になった」
「怖かった」
「知らなかったことを知った」
だけで終わってしまえば、その学びが実際の防災行動につながるとは限りません。
しかし今回、
「家族に今日聞いた話を伝えたい」
という気持ちを持ってくれた生徒がたくさんいました。
さらに、
「家族とハザードマップを確認したい」
「家族と一緒に避難ルートを確認したい」
「実際に歩いて確認してみたい」
「地域のためにもっと防災活動をしてみたい」
という声もありました。
これは、今回の防災教育で私が最も嬉しかった成果の一つです。

「大切な人の命を守るために」をテーマに行った防災講演
「命は一度失ったら戻ってこない」
今回の講演でもう一つ、私が生徒の皆さんに伝えたかったことがあります。
それは、
「命はとても大切だ」
ということです。
私たちは普段、学校へ行き、友達と話し、家族とご飯を食べ、当たり前のように毎日を過ごしています。
しかし、大きな災害が起きれば、その「当たり前の日常」が一瞬で失われることがあります。
そして、一度失ってしまった命は、二度と戻ってきません。
だからこそ、
今ある当たり前の生活を大切にしてほしい。
そして、
自分にとって大切な人の命を守るために、防災について考えてほしい。
これが、私が今回の講演で最も伝えたかったメッセージです。
当時の中学生だった自分だからこそ、伝えられる防災教育
今回、私自身が特に大切にしたのが、
「当時の自分と同じ世代の中学生に伝える」
ということでした。
私は東日本大震災を経験した当時、中学生でした。
だからこそ、現在の中学生の皆さんに、
「大学教授が専門的な防災の話をする」
のとは違った形で伝えられるものがあると思っています。
もちろん、防災の専門知識は非常に重要です。
しかし、災害を実際に経験した人間だからこそ伝えられる、
「そのとき何を考えたのか」
「なぜ逃げたのか」
「何が怖かったのか」
「どんな判断をしたのか」
という生の体験も、防災教育において大きな意味を持つと考えています。
生徒からもらった言葉
講演後には、生徒の皆さんからさまざまな感想をいただきました。
「津波てんでんこという教えを大切にしたい」
「家族とハザードマップを確認したい」
「家族と避難ルートを確認したい」
「実際に歩いて確認してみたい」
「地域の人のために防災活動をしてみたい」
こうした言葉からも、今回の講演が単なる「話を聞く授業」ではなく、一人ひとりが自分の生活に置き換えて考えるきっかけになったことを感じました。
先生からいただいた言葉
講演後、先生からも、
「実際に被災した方の生の体験を聞くことができて良かった」
という言葉をいただきました。
特に、
「当時中学生だった人が、東日本大震災の経験を現在の中学生に伝えることには大きな意味がある」
という趣旨のお話をいただいたことが、とても印象に残っています。
私自身も、今回の講演を通して、
「中学生に伝えること」
は自分の語り部活動の中でも、非常に大きな意味を持つテーマだと改めて感じました。
朝ヶ丘中学校での防災講演を終えて
今回の高知県須崎市立朝ヶ丘中学校での防災講演を通して、改めて感じたことがあります。
それは、
防災教育は「知識を教えること」だけではない
ということです。
災害について知る。
自分の地域のハザードマップを見る。
避難場所を確認する。
実際の避難ルートを考える。
そして、
「もし今、災害が起きたら自分はどうするのか?」
を考える。
さらに、学んだことを家族や地域の人に伝える。
そこまでつながって、初めて防災教育が「行動」になっていくのだと思います。
今回の講演後、回答してくれた生徒の約98%が「防災への関心が高まった」と答えてくれました。
そして、約93%の生徒が「すでに家族や友人と防災について話した」または「これから話したい」と回答しました。
この結果を励みに、これからも東日本大震災の経験を伝えながら、
「災害で亡くなる人を0人へ」
という目標に向かって、防災教育・語り部活動を続けていきたいと思います。
学校・自治会・企業などで防災講演をご検討の方へ
私は、東日本大震災を当時中学生として経験した被災当事者として、学校・自治会・自主防災組織・企業・福祉施設などで防災講演や語り部活動を行っています。
実際の被災体験を伝えるだけではなく、
- 東日本大震災の被災体験
- 釜石の奇跡の避難行動
- 津波てんでんこ
- 地域のハザードマップを使った防災学習
- 津波から命を守る避難行動
- 南海トラフ地震への備え
- 中学生・高校生が地域でできる防災
- 避難訓練
- 防災ワークショップ
- 家族や地域へ防災を広げる取り組み
など、対象や地域のリスクに合わせた防災教育を行っています。
「実際に災害を経験した人の話を聞いてみたい」
「子どもたちに命を守るための防災を伝えたい」
「地域の防災意識を高めたい」
という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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